北朝鮮の弾道ミサイル4発一斉発射などで、敵基地攻撃論がまた浮上している。だが、たたく目標を見つける方法がない。粗雑な論議で専守防衛を捨てるのか。
北朝鮮の弾道ミサイル開発が急速に進んでいるため、「それが発射される前に破壊すべきだ」との、「敵基地攻撃能力」保有論が政界で高まっている。自民党は2月23日、「弾道ミサイル防衛に関する検討チーム」を発足させ、敵基地攻撃能力の保有が焦点となっている。
だが、攻撃しようにも、相手の弾道ミサイルの詳しい位置がわからない。「偵察衛星で分かりませんか」と言う退役将官もいたが、偵察衛星は時速約2万8千キロで地球を南北方向に周回、各地上空を1日約1回通過する。1地点を撮影できるのは、カメラの「首振り機能」を生かしても2分程度だろう。
日本は光学(カメラ)衛星3機、夜間用のレーダー衛星(解像力は低い)3機を上げているが、よくて1日に計10分間程度しか監視できない。米国は光学衛星、レーダー衛星各5機を運用中と見られるが、日米合わせても1日に計最大30分ほどだ。
●衛星で常時監視できず
偵察衛星は飛行場や港、宇宙センターなど固定目標の撮影はできるが、常に1地点の上にいるわけではないから自走発射機に載せ位置を変える弾道ミサイルなど移動目標の捜索は困難だ。
静止衛星は赤道上空を約3万6千キロの高度で周回するから、地球の自転速度と釣り合って止まっているように見える。3機でほぼ世界各地を見張れるが、この高度からミサイルは見えず、その発射時に出る大量の赤外線(熱)を感知するだけだ。
日本が3機購入する米国製の無人偵察機「グローバルホーク」(関連装備を含む総額1500億円)はジェットエンジン付きのグライダーで、高度約2万メートルで最大36時間飛行できる。北朝鮮上空で常に旋回させれば、ミサイルを載せた自走発射機がトンネルから出るのも発見可能だ。だが、領空侵犯をすれば、旧式のソ連製対空ミサイル「SA2」でも簡単に撃墜される。公海上だけを飛行するなら、主に北朝鮮北部の山岳地帯に潜む弾道ミサイルは発見できない。