若者の車離れで“自動車王国ニッポン”の座が揺らいでいる。一方で欧米は電気と自動運転にまい進。いまやIT企業や新興勢力の参入も相次ぎ、もうバトルロイヤル状態だ。だが待ってほしい。日本には「技術」だってガラパゴスで元気な市場だってある。AERA 3月6日号「進め!電気自動車」では、そんな熱い人々にフォーカスしてみた。
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ハイブリッド車(HV)の代名詞ともなったトヨタのプリウスに象徴されるように、自動車業界は今、排出ガスを抑制するエコカー開発に躍起になっている。地球温暖化対策に各国が協調して取り組む仕組みを示した国際条約「パリ協定」が2015年に採択されるなど、環境問題への対応が国際的な優先課題となっているからだ。
環境施策を推進する速度はすさまじい。政治主導でどんどん強化される環境基準を満たさない車の販売はできなくする、という強引さだ。目指すところは排出ガスを抑えた車ではなく、全く出ない車「ゼロ・エミッション・ビークル(ZEV)」ということが明確になってきた。
米国最大の自動車市場であるカリフォルニア州のZEV規制は、同国内で最も厳しい。一定以上の台数を販売する自動車メーカーに対し、その販売台数の一定比率をZEVにすることを義務づけている。18年モデルからは規制が強化され、HVはそもそもZEVとして認められなくなる。
欧州全体に影響力を持つドイツでも、30年までに内燃エンジンを搭載した新車の販売禁止を求める決議が連邦議会で可決しており、電気自動車(EV)か燃料電池車(FCV)しか選択肢がなくなる。世界最大の自動車市場である中国も独自の規制で欧米の動きに足並みをそろえる構えだ。
環境規制の緩和や原油パイプライン建設を推進する大統領令に署名したトランプ米政権下で、ガソリン車への揺り戻しが起こる可能性はあるが、世界の大潮流の中で「影響は一時的」との見方が多い。