ヒジャブの素材の重要性を語るのは、早稲田大学創造理工学部建築学科4年生のアウファ・ヤジッドさん(22)だ。日本生まれ日本育ちのインドネシア人で、大学入学時からヒジャブを身に着けている。ファッションが好きで、自撮りした服のコーディネートやメイク方法などの動画をインスタグラムやユーチューブなどにアップしている。

 その中でも大事なのは「インナーヒジャブ」だ。髪の毛のはみ出しを防ぐのに役立つアイテムである一方、肌との密着度がより高くなるため、夏場は蒸れやすいという難点もある。

「去年発売されたユニクロの『ハナ・タジマ』製品を愛用しています。通気性がよく、小顔に見せてくれる効果もあるので」

 アウファさんは洗顔料やシャンプーなどの原料も確認している。例えば「プラセンタ」や「ヒアルロン酸」には、宗教上禁止されている豚の成分が入っていることもある。そのため、パッケージの確認や、メーカーに問い合わせをすることもある。

「でも、日本はオーガニックやボタニカル(植物性)なものが多く、不便はしてないですよ」

●ハラールにも地域性が

 千葉県市川市に本社があるマーナーコスメチックスは日本製のシャンプーで初ハラール認証の「エレンス2001プラス HALALスキャルプシャンプー・ヘアパック」を製造・販売している。アルコールや動物性の原料を一切使用せず、工場の製造から保管まで管理されていることで日本イスラーム文化センターから認証を得た。

 代表取締役社長の井田勝康さんは、コラーゲンやアルコール不使用で「きしみ感」なく、しっとりとした手触りに仕上げるのが難しかったと振り返る。

「それ以外でもコンタミ(異物混入)は難しかったです。ハラール製品用の窯を設置しないといけないので、専用ライン製造の初期投資がかかりました」

 2015年6月に岩手県の藤沢工場がハラール認証を取得。ここで生産されているのが前述のシャンプー類だ。グリーンティーの香りがする「茶」は現在、通常版とハラール版と両方販売されている。もともと海外で人気だった製品だが、ムスリムのマレーシア人に「この商品もハラールになったらいいね」と言われたのがハラール版の開発のきっかけとなった。ただ、同じムスリムでも中華、マレー、中東系で香りなどの嗜好は異なる。

「ハラールもローカリティーが出ないと難しい。最高の『茶』を追求するより、彼らが望むものを作っていかないと商品自体も成長しないと思います。まだまだ改良の余地はありますね」(井田さん)

 インバウンドで観光客も増えてきた今、ムスリム服やハラール対応商品などに注目してみると、新しい発見があるかもしれない。(編集部・小野ヒデコ)

AERA 2017年2月27日号