生後数時間で娘を亡くした神奈川県内に住む40代の女性は、お骨をそばに置いておきたいと思ったが、夫の両親が亡くなった娘のために墓を建てた。
「娘を思う気持ちはうれしいけど、月命日に空っぽのお墓をお参りしていると聞くと申し訳なくて。早く納骨しなければならない気がして苦しかった」
こうした悩みも、同じ経験をした仲間であれば気兼ねなく相談できる。そのひとつが、神奈川県を拠点に活動する「天使のブティック」だ。
横浜市の鵜飼礼子さん(48)は結婚9年目で長男・希望くんを妊娠したが、妊娠31週の健診で心臓の病気が見つかった。出産予定の病院からNICUのある総合病院へ救急搬送され、翌日帝王切開で出産。18トリソミーによる多くの合併症があるとわかった。
NICUで面会した希望くんに「ちゃんと産んであげられなくてごめんね」と泣き崩れた鵜飼さんに、担当の看護師は「のんちゃんは、あなたたちならと思って選んできてくれたんですよ」と言葉をかけてくれた。
希望くんは8日間生き切った。亡くなった後、その担当看護師が「天使のブティック」を紹介してくれた。
天使のブティックは、24週で生まれた次男・和人くんを1歳で亡くした代表の泉山典子さん(55)らが01年に活動を始めた。赤ちゃんを亡くした「天使ママ」たちが月に1度集まり、市販サイズより小さなベビー服を縫っている。
鵜飼さんは、天使ママたちがこんなにもたくさんいるのだと知り、一人じゃないと思えた。もう子どもは産まないと考えていたが、天使ママが連れた子どもを見て、「また子どもを授かることもできるんだ」と勇気をもらい、娘に恵まれることができた。
1年前、妊娠19週で双子の娘を死産した都内に住む会社員の女性(32)は、医師から「天使のブティックのお洋服を着せませんか」と小さな手縫いのベビー服を手渡された。
市販のベビー服は50センチサイズからが主流で、数百グラムで亡くなった赤ちゃんにとっては大きすぎて、より悲しみを深くする。天使のブティックの服は8センチからあり、阿部さんの娘たちにもぴったりだった。
「服を着た途端、赤ちゃんが人間らしくなって、すごくうれしかった」
メッセージカードもついていた。そこには、こんなことが書かれていた。
「あなたと同じような経験をした私たちが心を込めて縫いました。自分たちの天使に『このお洋服を着た子に会ったら、お友達になって一緒に遊んであげてね』と語りかけています。一人じゃないですよ、お子さんもお母さんも」
(編集部・深澤友紀)
※AERA 2017年2月27日号