“虎の子”売却でも出血が止まらない東芝。米企業を買収して大やけどを負ったのだが、この悲運、どうも偶然ではなさそうだ。なぜ見抜けなかったのか。
「東芝は完璧にハメられたね」と外資系ファンドのトップは言う。昨年末になって突然公表した「数千億円規模」の米原子力事業での損失。2月14日、その額が7125億円に達するという見通しを発表した。
ところが、その日発表予定だった2016年4~12月期の連結決算は最大1カ月延期。最終赤字4999億円、12月末の株主資本1912億円の債務超過という決算数値も一応は公表したが、「当社の責任において当社としての見通し及び見解を記述したもの」とし、さらに下方修正する可能性があることを示唆した。損失が確定できず、決算ができない異例の事態なのだ。
巨額損失の原因は原発建設・サービス会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)。米国の規制強化などで原発建設のコストが膨らむ中、電力会社やS&W、東芝の原発子会社ウェスチングハウス(WH)の間で費用をなすりつけ合う事態になっていた。そんな中、WHがS&Wを買収。それからわずか1年で巨額損失が表面化し、東芝が抱え込む羽目に陥った。
●「体制一新」を示した
東芝がWHによるS&Wの買収方針を発表したのは15年10月28日。その直前に取締役会で承認されたようだ。当時の東芝は不正会計問題に揺れ、歴代3社長らが引責辞任。9月末の臨時株主総会で新経営体制が発足したばかりで、取締役11人中7人を社外取締役にして、「体制一新」を示そうとしていた頃だ。昨年6月の綱川智社長体制でも6人の社外取締役がいるが、いずれも15年9月末に就任した人たち。それも大物ぞろいである。
まず経営者が3人。小林喜光氏は三菱ケミカルホールディングス会長で経済同友会の代表幹事を務める。もう一人は前田新造氏。資生堂の社長、会長を務めて今も相談役。池田弘一氏はアサヒビール(現・アサヒグループホールディングス)の社長、会長を務めて今も相談役だ。