アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はヤマトの「ニッポンの課長」を紹介する。
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■ヤマト リテール事業部 マネージャー 鈴木成人(47)
さいたま市にある「Karugamo English School」のArt Class(講師・白井裕子)。38人の園児が1枚のクレヨン絵を仕上げた。子どもならではの色鮮やかな世界観を、鈴木成人が優しい目で見つめる。園児が使った「カラリックス」をつくるヤマトのマネージャーで、自身も5月に第1子が誕生したばかりだ。
同社は、事務用液状のりでシェア約7割強を誇る「アラビックヤマト」が有名だが、ほかにも新製品を毎年6アイテムほど発売している。鈴木の主な仕事は、オフィス通販カタログ発行元への営業だ。
オフィス通販は年4千億円規模まで成長し、文具市場での存在感を強めている。カタログ発刊は年に1~2回。メーカー側で製品発売が遅れると次の掲載まで待たねばならず、売り上げに大きな影響が出る。
そこで登場する文具メーカーの営業は、掲載の締め切りを延ばしてもらうようカタログ編集者にかけあったり、生産を早めるよう社内の調整をしたり。時に「秘策」が求められそうな激務だが、鈴木の策は至って真っすぐ。
「何事も一生懸命。きちんとした仕事をすれば周りも助けてくれる。5人の部下にもそうアドバイスしています」
1992年、専修大学経営学部を卒業し、大手百貨店に入社した。33歳で早期退職者が募集されたのを機に転職を決意。「子どものころから文具が好きで」と、ヤマトに入社した。購買部門を7年間経験した後、久々に営業現場に戻った。百貨店時代からの「古巣」だが、勝手が違った。
「一部を除いて、ほとんどが自社開発品。製品に対するよりいっそうの愛着、知識が必要になりますね」
手帳にはメモが書かれた色とりどりのテープが貼られている。鈴木にとって思い入れがあるロール状の付箋「メモックロールテープ」だ。今年7月、海外営業との兼務になった。「本当に便利」というこの相棒とともに、創業117年の看板を世界に売り込む。
(文中敬称略)
(ライター・安楽由紀子)
※AERA 2016年10月17日号