経済専門家のぐっちーさんが「AERA」で連載する「ここだけの話」をお届けします。モルガン・スタンレーなどを経て、現在は投資会社でM&Aなどを手がけるぐっちーさんが、日々の経済ニュースを鋭く分析します。
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日本では年が明けますと今年の1年は?的な特集が必ずメディアから出てきますが、年末から1日たったくらいで何かが変わるわけはありません。前にも書きましたが、江戸時代のように本当に1年の借金から逃げ切れてチャラになるなら、そりゃ、年が変われば新しい世界が待っているでしょうが、そんなことは実際にはないわけであります。
ここ数年は、技術、特にIT技術の進歩がすさまじく、確実に加速しており、この変化についていけない人、企業は確実に死滅するでしょう。身近なものでは、ネット通販、中でもアマゾンの浸透力はすごい。日用品ならアマゾンでまとめて買うのでスーパーに行かない人はワタクシの周りにたくさんいます。
私の業界ではなんといっても、金融とITを組み合わせた技術、フィンテック。ビッグデータを解析する能力の向上と、コストが圧倒的に下がったことで発展がすさまじい。特に我々のような中小企業にとっては金融コストの削減につながる一方、既存金融機関、特に地銀・信金などの存在理由がなくなりそうな気配です。アメリカでは既に現実のものとなっていて、ワタクシの友人が一度も面談も書類のやり取りもせずに、フィンテックの信用分析のみで100万ドル(約1億1700万円)の融資を受けたことは衝撃的でした。既存の金融機関は存在価値がありません。
同じくアメリカで見た中では自動運転車もものすごい進歩です。アメリカに行くたびに定点観察しているもので、一昨年見た時には「これはしばらく使い物にならんな」という印象だったのですが、わずか1、2年で実現可能な領域まで進歩を遂げていました。アメリカのような広大な国ではもちろんのこと、日本でも地方の交通問題はこれ一発で解決できます。鉄道会社などはもう線路がいらないという話であって、こうなると業態変化どころではなく、最終的には不動産業と変わらない業態になるのかもしれません。
IT技術の進歩の最大の特徴は、これを有効活用すれば設備投資コストを最小化できるということです。今まで1億の初期投資が必要だったビジネスが、1千万円もあればできてしまうなんて業種はザラで、既得権者は猛烈に抵抗するでしょうが、もう誰にも止められないところまで来ているのです。
※AERA 2017年1月16日号