そうした軍事力を背景に、中国は11年から積極的に「新型大国関係」を米国に持ちかけている。13年のオバマ・習近平会談では、オバマ大統領が「新型大国関係」構築のための議論に応じたとしている。そこでは両国の衝突回避、中国が主張する尖閣諸島などの領土保全を含めた「核心的利益」の相互尊重などが挙げられた。

 しかし、米国は中国の国際社会からの孤立を狙い、15年5月に中国による南シナ海での人工島建設をCNNに報道させるなど、同調する姿勢は見せていない。小原さんはこう指摘する。

「大統領選後の習・トランプ電話会談で、かねて主張していた『新型大国関係』という言葉を習氏が使わなかったことが中国国内では話題になっています。米国の腹のうちをまだ探っているという状態にある」

 中国が米国の意思をつかみきれていないなら、ますます冒頭で宮家さんが指摘したような「テスト」が尖閣諸島で行われる可能性も十分あるだろう。日本にできることは限られている。元航空自衛官で参議院議員の宇都隆史さんは、こう話す。

「魚釣島に灯台や気象観測レーダーなど、日本政府の構造物を造り、内外に実効支配を示すべきだという意見もある。ただ、中国の反応を考えると、慎重にならざるを得ない。警戒にあたる海保の職員、自衛官の安全が守れるかが前提となる」

●極めて深刻な北朝鮮

 先の伊藤さんの指摘はこうだ。

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