「在日米軍の撤退は現実的ではないが、仮に縮小の方向に動けば、ただでさえ活発化している中国の尖閣諸島での動きは、さらに本格化する」(伊藤さん)
今年6月には尖閣諸島の久場島周辺の接続水域に初めて中国軍艦が侵入。8月には最大300隻の中国漁船が押し寄せ、過去最大となる15隻の中国公船が領海侵入をしている。
中国の狙いは何なのか。駐中国防衛駐在官などを歴任した東京財団・政策研究調整ディレクターの小原凡司さんはこう話す。
「最大の目的は、米中間で大国関係を結び、アジア太平洋のルールを両国で決めていくこと。そのためには米国と対等な立場を示さなければならない。中国は通常兵器では圧倒的に劣る以上、核抑止力が必要だと考えている。海底資源、海上輸送路の確保に加え、軍事戦略上、南シナ海は彼らに不可欠なものだ」
●対米抑止に必死な中国
米国に対する核抑止力を持つためには、仮に米国から先制核攻撃を受けても報復攻撃ができる核が必要になる。現在、中国の戦略原子力潜水艦が搭載する弾道ミサイル「JL-2」の射程は8千キロ前後。太平洋に広く展開しなければ、米国全土を攻撃することはできない。小原さんが続ける。
「南シナ海は水深が深く、戦略原子力潜水艦を米国に探知されずに太平洋に出せる可能性が高い。また、南シナ海を含む第1列島線に加え、伊豆諸島からグアム、オーストラリア沖に延びる第2列島線を構築し、中国はできるだけ本土から離れた場所で米国の中国への攻撃を阻止しようと考えている」