近畿大学の加藤さんは、余計な「CC」を入れないよう、部下にも指導している。
「メールが多いので、埋没を防ぐためです。CCメールは、報告にはなりません」
そして、メールの署名には、いま一押しの案件のキャッチコピーを添えているという。
「一本のメールでも、宣伝ツールになりますから」
●ハドリアヌス帝が師
仕事に困ったとき、初心に帰りたくなったとき、本棚から手に取るのは、どんな本だろう。
中間管理職の悩みは尽きないのか、ハドリアヌス帝から、孫子、宮本武蔵、ドラッカーまで、古今東西のマネジメント本が集結した。
「指導する立場になってからは心の持ち方や教え方、マネジメントに役立つ本を読むようになりました。昔は小説や随筆が好きで、そういうのはほとんど読まなかったんですけど、環境によって変わるものですね」
と話すのは国立国際医療研究センターの竹下望さん(40)だ。
竹下さんが挙げたのは『五輪書』。宮本武蔵が勝負事に関する自分の考えを書いた兵法書だ。短文で分かりやすく、さまざまな解釈ができるように書いてあるので、折に触れて読み返している、と竹下さんは言う。
同じく兵法書でも、USJの津野さんは『孫子』を挙げた。
「リサーチと補充のための人員は十分にたくわえておくように、とか、戦うと決めたら勢いに乗って徹底的に攻め込むべし、とか。戦略を練るうえで重要なことばかりなので、参考にしています」
Sansanの芳賀さんは、「五賢帝」の一人であるハドリアヌス帝(76~138)を尊敬している。彼を主人公に書かれた本が『ローマ人の物語 25』だ。
「疲れない実務家」「天才的なオーガナイザー」とも称される皇帝だ。
広大なローマ帝国の各地に自ら足を運んで、安定した国造りに努めた。兵士の寝具を改良するなど実務家としての側面が強いことから、高く評価されている。中長期的な視点を持ち、着実に実務をこなしていく姿にひかれるのだという。
そして「マネジメント」の教科書の定番として外せないのがドラッカー。三井不動産の小川さんは、4月に新しい部署に異動し改めて読み直した。ことあるごとに読み返し、新たな気づきを得ているという。(編集部・高橋有紀、竹下郁子、福井洋平、編集協力/河嶌太郎)
※AERA 2016年10月10日号