●真の焦点は離脱の仕方

 そうした「ショック」は避けられたとしても、円高・株安の傾向は当面続くという予測が目立つ。みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストは、来年にかけて1ドル=95円ほどに円高が進み、一時的には90円に達する可能性もあると予想。野村証券は、日経平均が短期的には1万4500円程度まで落ち込む可能性があるとみる。しばらくの間、市場は荒れ模様の展開となりそうだ。

 ただ、「国内景気そのものへの影響はそれほど大きくない」という見方が今のところ有力だ。

「通貨ポンド下落に伴う輸入品の物価上昇を受けたインフレなどによって、英国の国内総生産(GDP)は2%縮小し、住宅価格も1割下落して景気後退に陥る可能性があるとみています。ただ、日本の輸出総額のうち英国向けは15年時点で1.3%。当面、日本の景気への影響は限定的でしょう」(野村証券の桑原氏)

 経済専門家が最も注目するのは、英国がどんな形でEUを出ていくことになるかだ。EU域内では人やモノ、資本の移動の自由が認められ、域内貿易には関税もかからない。英国とEUは原則として今後2年間でこれらのルールをどうするか協議する。この交渉の行方こそが、日本企業のビジネス環境と欧州戦略を大きく左右することになる。(編集部・庄司将晃)

AERA  2016年7月4日号

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