実は、「昨年末頃から米国内ではドル高是正を求める声が高まっていた」(先物取引業者)。特に、エネルギー業界は原油安が直撃。債務の借り換え時期が集中する4月には、シェールオイル関連企業のデフォルトが多発すると言われた。原油相場は一般的にドルと逆相関にある。そのため、「デフォルト回避のために、米国が2月のG20以降ドル安方向へ舵を切ったという話が飛び交った」(同)という。

 そんな米国当局の姿勢が明確になったのは、4月に公表された為替報告書。中国などと並んで、日本が「為替監視リスト」に盛り込まれたのだ。「介入等でドル高を助長すれば為替操作国に認定する」と、脅しをかけた格好だ。背景には米国経済の息切れ感も見え隠れする。

「米国の労働市場情勢指数は年始から4カ月連続でマイナスを記録している。これは、09年7月に米国が景気回復に転じて以来、初めてのこと」(内田氏)

 米大統領選ではトランプ氏、ヒラリー氏とも円安を批判してきた。それだけに、より劇的な円高シフトを予想する声も。

「米国は94、99、04年と過去3回利上げしているが、その後はいずれも円高に振れている。利上げ後1年の下げ幅の平均は23%。125円の高値から逆算すると98円が見えてくる。到達はすでに想定内」(エモリキャピタルマネジメントの江守哲氏)

(ジャーナリスト・田茂井 治)

AERA  2016年5月30日号より抜粋

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