そもそも、核先制不使用の発言は今回が初めてではない。過去にも「先制使用しない」「むやみに誰かを攻撃するものではない」と何度か釈明していた。

 しかし、米韓との軍事緊張が高まるや「先制攻撃は米国の専売特許ではない」とか「米国を攻撃するものであることを隠さない」と一転、米韓を威嚇したのは周知の事実である。ホワイトハウスやペンタゴンを核攻撃するCG映像が流されたのはつい最近のことだ。

 金委員長は、「責任ある核保有国として核拡散防止義務を誠実に履行する」と言っているが、これまた、「核兵器や技術を第三国に移転しない。核不拡散条約(NPT)を守るので保有を認めてもらいたい」と言っているのに等しい。そもそもNPTから一方的に脱退し、核を開発。保有したいま、拡散防止義務を履行するというのでは虫が良すぎる。

 肝心の核実験の中止と核施設の凍結については一言も触れていない。むしろ、「核戦力を質量ともに拡大する」と開き直っている。(コリア・レポート・辺真一(ピョンジンイル))

AERA 2016年5月23日号より抜粋

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