
各国首脳らによるタックスヘイブン(租税回避地)での蓄財を暴露した「パナマ文書」。発端はドイツの新聞社への1本の連絡だった。
今から1年余り前のことだ。
「ハロー、私はジョン・ドウです。データに関心はありますか?」
南ドイツ新聞の記者のもとにそんな連絡があった。「ジョン・ドウ」は日本語に訳すと、「名無しの権兵衛」。バスティアン・オーバマイヤー記者がこれに返答した。
「とても関心があります」
すると、返信があった。
「2、3の条件がある。私の命は危険にさらされています」
「私とあなたは、暗号化されたファイルでのみチャット(会話)する。決して会わない。記事の選択はあなた方次第」
オーバマイヤー記者は問い返した。
「どうしてあなたはこんなことをしているんですか?」
「犯罪を表に出したいのです」
腐ったビジネスをやめさせたいのだとその人物は説明した。金銭の要求は一切なかった。
「どのくらいの量のデータなのですか?」
「あなたが、いまだかつて見たことのない量です」
「ジャーナリズム史上最大のリーク」はこのように始まった。