『宇宙兄弟』の時の仮説は「女性読者が増えるとヒットし始める」。それまで、売れる漫画は7割が女性読者で、テーマが宇宙だと女性にウケないから売れないと思われていた。『宇宙兄弟』も発売当初は男性読者が7割で売れ行きもイマイチ。そこで、女性はどんな場所で本を手に取り、見る映画をどう決めるのか、などをひたすら考えた。たどり着いた結論は「美容室」。

 女性たちは、自分がセンスがいいと思っている行きつけの美容師から「面白いよ」と薦められればきっと読んでくれるに違いない! 20万円の予算で、首都圏の美容室400店に2冊ずつ、思いを込めた手紙を添えて郵送した。するとアンケートハガキに「美容室で薦められて読んでみました」というコメントがちらほら出てきたのだ。実際にハガキをくれるのは読者のごく一部。背後に同じような人が何倍もいたはずだ。もちろん漫画自体の力があってこそだが、火がつくきっかけの一つになった、と佐渡島さんは振り返る。(アエラ編集部)

AERA  2016年4月11日号より抜粋