「当社は、どんな仕事をするかより、誰と仕事をするかを重視している。だから、まずは社員が『一緒に働きたい』と思うことが重要なのです」(人事部・柴田史郎さん)

 例えば橘さんが求める同僚は、「行動力のある人」。先日は、幼稚園でお絵かきのワークショップをしている大学生にファストパスを渡した。「幼稚園に自ら交渉に行った」と聞き、その行動力に惚れたのだ。

 ファストパスで紹介した学生は、実際に上司や人事部が面談をして、実力を見極める。裁量は大きくないものの、橘さんはこの役割を楽しんでいる。

「私に採用の権限はなく、あくまで一緒に働いて違和感がないかをチェックする程度。でも社員を選んでいる感覚も得られ、会社に愛着がわきます」

 ちなみに、いきなり最終面接に進める「ラストパス」もあるが、これはリーダーなど一部の社員しか使えない。

 ユニークな人事制度を導入する会社が増えている。会社が社員を上から縛るルールよりも、社員の主体性を引き出し、業績アップにつなげようとするものが目につく。制度の設計などを支援するモチベーションエンジニアリング研究所の大島崇所長は、こう解説する。

「高度成長期は会社が社員を一方的にコントロールしてきたが、両者の関係が変化し、『相互選択関係』になっている。いま必要なのは、社員に寄り添い、働きやすさを担保する制度です」

(アエラ編集部)

AERA 2016年3月21日号より抜粋

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