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世界中で飼われている家猫の数は、「人間の親友」である犬の3倍だという。長く人間と暮らしながら、今なお謎が多い猫をめぐる本は、新刊が次々に出る特別なジャンルだ。今回はそのなかから、読んで良し、眺めて良しのおススメ猫本をご紹介する。
「惨めさから抜け出す方法は二つある。音楽と猫だ」(アルベルト・シュバイツァー)
気まぐれでわがまま。思うようにならないのに、小さくて毛むくじゃらの生き物は、書店でもコーナーを作るほどの本を生み続けている。
数ある猫本の中から、まずは古典的な名作を。夏目漱石、三島由紀夫、室生犀星などなど、猫を愛した文豪は多いが、その中でも内田百閒『ノラや』は特筆すべき一冊だ。
なにせ百閒先生は、失踪した野良猫ノラのために新聞広告や折り込みチラシまで作り、ノラの行方を捜し、日々嘆き、悲しみ、めそめそする。猫の存在と喪失の大きさが伝わってくる。
現代の作家では、初めて飼った猫との日々を書いた、角田光代『今日も一日きみを見てた』。初対面の西原理恵子さんに「子猫をあげる」と言われ始まった猫生活をつづるエッセーなのだが、西原さんが角田さんに猫をあげようと思ったのか―― ? 最後に明かされる理由が泣ける。
少女マンガの金字塔、擬人化された少女猫が主人公の『綿の国星』を描いた大島弓子は、その後『グーグーだって猫である』などの猫エッセーが絶大な人気を得た。『キャットニップ』はその続編。一冊の本が終わっても、猫たちとの生活は続くのだ。
マンガ界では、エッセーから物語まで、猫たちが大活躍。猫がプロ野球選手になる『猫ピッチャー』や、もはや名作の域、家政婦として働く猫『きょうの猫村さん』まで、職業を持った猫たちも。マンガ家と猫は相性がいいらしい。
猫と暮らせない人にも大丈夫、写真集がある。日本だけでなく世界各地の猫を蒐(あつ)めた旅本が最近の人気。そのほか『世界で一番美しい猫の図鑑』なども。
※AERA 2015年11月2日号より抜粋