アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。
現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。
あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。
今回はPSソリューションズ(ソフトバンクグループ)の「ニッポンの課長」を紹介する。
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■PSソリューションズ(ソフトバンクグループ) 農業IoT事業推進部 課長 坂井洋平(36)
この日、IT関連企業「PSソリューションズ」で課長をしている坂井洋平(写真手前)は、千葉県外房の農家で「案山子」を眺めていた。でも、これはカラスの類を追っ払うためのものではない。なんなのか。坂井によるとこうだ。
「名前は『e―案山子』。農業に必要なデータを測り、『見える化』する機器です」
このビニールハウスなら、トマトだ。温度管理や水やりには工夫がいるが、これまでは「経験と勘」に、判断基準が委ねられてきた。そこを「データ」でやったら、どうか。精密農業がぐっと身近になる。そう考える。
水や日射量、CO2濃度などのデータを計測。ネットを介して、農業従事者はタブレット端末などでチェックできる。こだわったのは、わかりやすいグラフィックと、シンプルな操作感。アプリをいじるのと同じ感覚で、遠隔地からでも把握できる。
2001年、徳島大学工学部を卒業し、J―フォン西日本に入社。04年にいったん退社して、仲間と会社を起業。08年にソフトバンクモバイルに入社。すぐに、社内の新規農業プロジェクトの創設に参加した。「e―案山子」を、社内の事業応募に提案。1300件中で10件しか出なかった合格を、チームで勝ちとった。
農業をITでなんとかしたい。そう考えるのには理由がある。兵庫県の淡路島出身。実家は農家。帰省のたびに、故郷の農業が高齢化や担い手不足でやせ細っていくのを実感してきた。それは、「大きかった親父の背中が、こんなに小さくなってしまった」に似ている。
e―案山子は、全国5カ所で試験運用中。今年中に、一般へのサービス開始を予定している。理想は、ベテランの知見を新規就農者に伝えること。データが両者をつなぐ。(文中敬称略)
※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです
(編集部・岡本俊浩)
※AERA 2015年1月26日号