しらせは1年に南極を1往復、隊員と大量の物資を運ぶのが使命だ。燃料は通常、船から基地のタンクまでパイプラインをつないで送る。港も桟橋もない昭和基地では、ホースが届く1キロ以内に近づければ「接岸」だ。だが53、54次隊(12、13年1月)は厚い海氷に阻まれ、基地の約20キロ手前で進めなくなった。燃料はタンクやドラム缶に詰め直して空輸。雪上車も物資を積んで氷上を何往復もした。

 空輸を担う大型ヘリコプターが1機足りないのも不運だった。本来は2機を搭載していくはずが、53次隊以降、故障や整備で南極へ1機しか出せていない。観測隊のチャーターヘリは小型や中型で輸送力も小さい。

 物資は総量約千トン。53次隊はその6割強しか運べなかった。越冬には通常600キロリットルの燃料が必要だ。基地に備蓄もあるが、「接岸できず燃料不足が続けば、越冬できなくなるかもしれない」と観測隊の派遣元・国立極地研究所の白石和行所長は不安を漏らす。

 燃料や機材が運びきれないと観測に響く。地球温暖化を探る世界初の試みと注目された大型大気レーダーは11年建設、稼働の準備を進めていたが、「しらせ」の接岸不能が続いて機材搬入が遅れ、本格稼働はこれからだ。フル稼働には大量の電力が必要となり燃料も使う。

AERA 2015年4月13日号より抜粋