いわゆる「理系」の現場には、まだまだ女性が少ないのが現実。その希少性が、現場では強みとなることがある。活躍するリケジョを追った。
長さ約20メートル、重さ約30トン。神戸製鋼所の鋳鍛鋼事業部で主任研究員を務める松田真理子(38)は、船のエンジン部分に当たるこの「クランクシャフト」に携わって10年になる。初めて見たとき、その巨大さに驚いた。
「これを人の手でつくっているのかと思うと胸が高鳴りました」
総合技術研究所で基礎研究に携わった後、技術を実際に顧客に役立てられる部門で働きたいと、現在の事業部へ異動した。同社の船舶用クランクシャフトは、世界シェアの約4割を占める。現在、松田が注力するのは設計技術の進歩に伴うルールの改定。国際標準ルールを日本にとって有利になるよう改定するにはどうすればいいかについて、研究するワーキンググループに会社代表として参加する。
国際会議にも出席する。日本の造船業界は、歴史があり、技術力も高いが、会議をリードするのは欧州。その欧州の国からでさえ、女性の参加者はほとんどいない。つまり、松田の存在はダブルで“超希少”だ。