世界的に見ても、労働時間が長い国とされる日本。生活の中心を仕事に置く日本の家族観は、外国人の目には異様に映る。それは、家族関係にも大きな影響を与えているのだ。国際比較できる数値を中心に、違いを見ていこう。

 日本女子大学の永井暁子准教授(家族社会学)らが、日本とフランス、アメリカ、韓国の4カ国で、家族全員で夕食を取る頻度を調べた。フランスの男性は過半数が「必ず毎日」なのに、日本は2割を下回り、韓国に次いで少ないという結果になった。

 韓国と日本は同程度に勤務時間が長い。だが、家事時間は日本の男性のほうが短く、夫婦での分担も進んでいない。東京とソウルで考えれば通勤時間の差が帰宅時間を遅らせていることが原因かもしれないと、永井さんは分析する。

 年代別にみると、一緒に食事を取る頻度は年齢が上がるにつれて減っていく。家族で夕食を囲むことが会話やだんらんにつながるとすれば、家族関係はどんどん冷え込んでいくようだ。

 父と子の関わりが薄い現状は、会話時間からもわかる。2009年度の「全国家庭児童調査」(厚生労働省)によると、働いている父が1週間に子どもと交わす会話は、4時間(1日あたり約35分)以下が最多。雇用契約期間が1年を超えるか、正規の一般社員で30.8%となっていて、同じ立場の母15.1%と比べると、かなり差が開いており、父の「不在」感が際立っている。永井さんはこう言う。

「日本には夫婦生活を長く続けることに価値を置く傾向があり、現状がつらくても耐えようとする。一方、欧米では常に関わっていないと離婚になるので、家族でいるためには長く一緒に過ごすようにするなど、努力が必要なのです。ただ、これからは日本でも若い女性たちが、退職後に邪魔者扱いされるような夫に我慢し続けるとは思えず、状況は変わるかもしれません」

AERA  2015年2月16日号より抜粋