
アップルCEOティム・クック氏が、ブルームバーグ・ビジネスウィークに「ゲイであることを誇りに思う」というタイトルで寄稿、自身がゲイであることを公表した。告白は米社会に衝撃を与える一方、温かな評価も広がった。
「クック氏はアメリカン・ドリーム・ストーリーだ。自分自身を受け入れてゲイになり、そして世界で最も価値ある企業のCEOにもなれる」
10月30日朝、経済ニュース専門局CNBCに電話出演した金融機関C1ファイナンシャルCEOでゲイでもあるトレバー・バージェス氏は、興奮気味にこう語った。
「ゲイであることを誇りに思う」
寄稿タイトルを見たとき、誰もが目を疑い、まず出版元が風刺専門のニュースサイトでないか確認しただろう。ところが、米経済誌のブルームバーグ・ビジネスウィークへの寄稿。これまで特にプライベートが謎に包まれていただけに、ティム・クック氏がゲイであることを公にした衝撃は大きい。
しかし、米テレビニュースや世間の受け止め方はかなり好意的だった。以前から同性愛者の権利を支援してきた金融大手ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファインCEOは、クック氏の親しい友人でもある。
「彼はナンバーワン企業のトップだ。だから、世界的に共鳴を呼ぶだろう」
オバマ政権発足以来、ニューヨークやカリフォルニアを含む多くの州が同性愛者の結婚を認める州法を可決した。10年前であれば、同性愛者であることが分かれば、CEOに選任されることは困難だった。米国が同性愛者を受け入れてきたタイミングでの、クック氏の寄稿だ。
クック氏は2011年、カリスマ的存在だった故スティーブ・ジョブズ氏の後を継ぎ、CEOとなってから、世界中の注目を浴びながらも「未知数」だと言われてきた。しかし、最近は「アップル=クック」と評価され始めたところだ。
アップルとクック氏の実績が、ゆるぎない地位にあることを考慮してのカムアウトであることは間違いない。寄稿の言葉も磨きぬかれ、クック氏は公表前に取締役会に諮り、承認を得る手続きさえ踏んだ。
※AERA 2014年11月17日号より抜粋