
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親子関係、特に思春期の娘と父親の関係は難しいもの。でも、こんな“必殺アイテム”で娘との距離を縮めた父親もいる。
大手メーカーに勤務する谷古宇(やこう)啓之さん(49)は3年前、グローバルマーケティング部に異動したのを機に、オンライン英会話レッスン「レアジョブ」を始めた。英語の上達以上に大きな成果は、専門学校生の娘、美香さん(18)との会話をぐっと増やしたことだ。
英語に興味があった美香さんも父に続いて同じオンライン英会話の会員になった。思春期の娘は友達付き合いなどで忙しく、父とゆっくり話す時間が減っていたが、英語を学び始めると、一緒にいる時間が増えた。特に、英語の勉強のため、美香さんの大好きなDVD「美女と野獣」を見るときは、啓之さんもテレビの前に座り、「今の決めゼリフだ」「英語でも聞き取れるね」と、会話が弾む。二人で、マンツーマンレッスンの先生役と生徒役をやることもある。
「普通なら、わざわざ父親と『私の趣味はバドミントンです』なんて話さないですよね。でも、英会話教材を前に、英語で話すからこそ、他愛もない話も盛り上がります」(啓之さん)
親子の絆を深める“必殺アイテム”がある。会社員の向井亜矢子さん(40)にとって、それは「料理」や「調理器具」だ。
亜矢子さんの隣で、娘の一華ちゃん(4)が「子ども用包丁」を握りながら、ぎこちない手つきで野菜を切る。ギョーザの皮にたねを包んだり、小麦粉と水でうどんを作ったり、ゆでたじゃがいもをつぶしたり、調理用具を手に一緒に夕食を作る。
1年前までは、大急ぎで仕事を終えると、6時までに保育園に一華ちゃんを迎えに行き、「ねえママあそぼー」と、まとわりつく娘に、「いいからちょっと待ってて」とイライラしていた。夕食を早く作って、風呂に入れて、寝かさないと、と焦りキツく言ってしまって自己嫌悪。その繰り返しだった。ある日、一華ちゃんが四苦八苦しながら自分で皿を並べていた。やらせてみよう!毎日親子で夕飯の準備をすると、会話が増えた。
※AERA 2014年9月15日号より抜粋
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