私はパソコンをもっていない。この文章も、手書きですませている。原稿用紙に、エンピツで書きつづけてきた。

 インターネットをとおして配信されているというこの「ジャズ・ストリート」も、見ていない。私以外の人が何をどう書いているのかは、まったく不明である。

 仮に、私の書きっぷりが非難されていたとしても、私には気づけない。まあ、誰もそんなことはしていないと思うが、すこし気がかりである。

 こまるのは、以前に自分が何を書いたのかを、わすれてしまう点である。紙媒体の雑誌なら、バックナンバーをとりだせば、ふりかえることもできる。しかし、ネット。マガジンでは、それもかなわない。くりかえすが、パソコンをもたない私は、この「ジャズ・ストリート」が、読めないのである。

 さいわい、編集者から、そのネタ、前にも同じことを書いていましたよと、言われたことはない。たぶん、かすかな記憶をたよりにしつつ、私なりになんとかやりくりをしているのだろう。しかし、この連載も、もう二年近くになる。いつまでも、この記憶でのりきれるかどうかは、はなはだこころもとない。

 表現にたずさわる人は、しばしばパソコンで、ホーム・ページをひらいているという。

 そこで、自分の活動に関する告知などを、するらしい。某月某日、さるシンポジウムに、パネラーとして招かれました。関心のある人は、聴きにきて下さい、というように。パソコンで、その表現者をおいかけている人には、ありがたいしくみだと思う。

 もちろん、私はホームページをもっていない。文筆家としての私は、これまでそんな告知の必要性を、感じてこなかった。それに、たとえパソコンがあやつれたとしても、そういうめんどうなことをつづける自信はない。

 だいたい、日記も、義務教育期のころ以外は、つけたことがないのである。自分にホーム・ページがたもてるとは思えない。

 だが、今回は、ちょっとパソコン、ネット情報にたよりたくなった。自分の活動を、ひろくみんなに知ってもらいたいと思っている。それは、ほかでもない。やや大きいステージで、ライブ活動をおこなうことになったからだ。

 ソロ・ピアノのステージを。

 場所は、「ラグ」という京都のライブハウス
 TEL 075-255-7273
 http://www.ragnet.co.jp/
 e-mail: mail@ragnet.co.jp

 京都では、ジャズをあじわういちばんの老舗である。演奏日は、2009年1月29日(木)。開場は夕刻6時、開演は7時半から。前売り券は、2,000円である。

 この告知を、音楽好きの人へつたえるてだてが、私にはまったくない。ただ、さいわい今は、この「ジャズ・ストリート」に文章を書かせてもらっている。

 それで、今回は、この場をかりて、みなさまに御案内と考えた。申し訳ないことだが、今回かぎりということで、大目に見てほしい。

 「ラグ」には、私のようなしろうとに声をかけてくれたという恩誼がある。やはり、ひとりでも、多くのお客さんにはきてほしいと思う。はしたない宣伝にはしってしまったゆえんである。

 この「ジャズ・ストリート」を、どのぐらいの人が読んでいるのかは、よく知らない。また、京都近辺の読者事情についても、まったく不案内である。私自身が、アクセスのてだてを知らないのだから、わかるわけもない。

 しかし、ジャズに興味をもつ読み手がささえている媒体では、あるだろう。1月29日の「ラグ」を、心にとめておいてくれれば、さいわいである。

 とは言うものの、私のピアノがジャズになっているのかどうかは、ややこころもとない。「ジャズ・ストリート」を読んでいるのが、たいそうコアなジャズ好きだったら、どうしよう。

 小曽根真や塩谷哲らとくらべられたら、立つ瀬はない。ここまで書いておきながらなんだが、やはり告知はやめたほうがよかったのだろうか。

 いや、もうひっこみがつかない。あえて、押し売りの汚名もかぶろう。

 私は、41歳で、ピアノにいどみだした。見よう見まねのジャズ・ピアノに、はげんでいる。今は53歳、12年間ほどつづけてきたことになる。

 大人からのピアノで、12年目にたどりついた音楽が、どれほどのものか。それを、あじわってもらえればと、願っている。

 一介のおっさんが、よくここまでねりあげられたなと感心してもらえれば、うれしい。やはり、大人からのピアノには限界があるなと、げんなりしてもらうのも一興。とにかく、プロのステージではかもしだせない気配がだせればと、思っている。

 とくに、若いお嬢さんたちがきてくれれば、おじさんとしてもよろこばしいのだが……。

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