井深大氏と盛田昭夫氏が1946年に創業したソニー。大賀典雄氏、出井伸之氏ら多彩な経営者が革新的商品を送り出したのも、今は昔(撮影/写真部・岡田晃奈)
井深大氏と盛田昭夫氏が1946年に創業したソニー。大賀典雄氏、出井伸之氏ら多彩な経営者が革新的商品を送り出したのも、今は昔(撮影/写真部・岡田晃奈)
この記事の写真をすべて見る

 携帯音楽プレーヤーの「ウォークマン」、鮮やかな画像の「トリニトロンカラーテレビ」、家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)」…。革新的な商品で世界を席巻したソニーが、電機事業で稼げなくなって久しい。電機事業は売上高の6割を占めるが、2011年7~9月期から赤字続きだ。今年の4~6月期に黒字転換したが、7~9月期には再び赤字に戻った。ソニーをウオッチする証券アナリストからは、こんな声が漏れる。

「ソニーらしい、面白いアイデアにあふれる独創的なヒット商品は、PSが最後」

 停滞の理由は、主に二つが考えられる。一つは、いまやデジタル家電でもうけられる企業そのものが少なくなったということだ。韓国のサムスン電子など、力をつけてきた海外メーカーとの激しい競争にさらされ、価格競争による消耗戦が続く。

 もう一つは、社内の意識の問題だ。ソニー幹部はよく「お客様にいいものを届けたい、という思いでやっている」と話す。技術力は今も評価が高いが、

「ソニーの間違いは、技術が高ければ少々高くても買ってくれると思っていること。いまやデジタル家電は、発売から少したてば安くなると思われていることに気づいていない。ソフトとハードを合わせた根本的なビジネスモデルの転換が必要になっている」(証券アナリスト)

 米アップルは「iPhone」や「iPad」を売るだけでなく、音楽や動画を配信し、OSも提供するなど、客がアップル製品から離れられなくする仕組みを作った。似た取り組みはソニーも進めるが、成功しているとは言い難く、部門間の「縦割り」も消えたとは言えない。

AERA 2013年12月2日号より抜粋