地震のリスクが懸念される中で決定した、2020年の東京五輪開催。実際、会期中やその前後に地震が起こる確率はどれくらいなのだろうか。専門家に聞いた。

 そもそも、さまざまな災害リスクが高い地域での五輪開催は珍しい。夏の五輪開催地は、アテネ、メキシコといった例を除き、おおむね地震が起こりにくい地域だった。2020年東京五輪は、きわめて地震リスクの高い地域での開催だ。

 政府の地震調査研究推進本部は、南関東で30年以内にマグニチュード7級の地震は70%の確率で発生すると予測している。明治大学の中林一樹特任教授(都市防災)は言う。

「事前、直前、最中、直後、事後のどこかでは首都直下地震は必ず起こる」

 これから五輪に向けて海外からプレスや観光客が来るだろう。ある時、まわりの人たちの携帯電話が一斉に鳴り、しばらくしてぐらぐら、地面が揺れる経験をしたらどう思うだろう。緊急地震速報が流れても、何が起こったかわからず、恐怖を感じる。南海トラフ地震が起これば最悪で32万3千人の死者が出ることを知ったら、日本は危険だから五輪を開くべきではない、との国際世論が形成されるおそれはないだろうか。

「そういった風評被害を起こさないためにも、正確なリスクを説明し、防災対策を講じることで『東京は安全』と言うべきなのですが」(防災学者で神戸大学名誉教授の室崎益輝さん)

 東京大学地震研究所の平田直教授は提案する。

「地震国の日本でオリンピックをやる意義があります。日本がどのような対策を取っているかを知ってもらい、防災のリテラシーを学んでいただく機会にしてはどうでしょう」

AERA 2013年11月11日号より抜粋