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 11月1日にバンコク市内で逮捕され、現地で報道陣に、「申し訳ないです」「早いうちに人生を終わらせたいと思い…」

 うつむいて、憔忰しきったように話す坂本芳信容疑者(56)。タイでの逃亡生活3年2カ月、有り金を使い果たした末の姿は自業自得とはいえ、何とも哀れなものだった。

 報道によると、逮捕少し前に彼は日本語の看板が立ち並ぶ通称「日本人横町」の繁華街で、そば屋に立ち寄り、ざるそばを食べていた。「そば」といえば長野名物。古里が恋しくなっていたのか。店主に生活の糧を聞かれると、「もう、年金暮らしですよ」

 なるほど「年金で食っていた」には違いない。建設会社従業員らの年金資金を運用する「長野県建設業厚生年金基金」(長野市)で23億8730万円が行方不明になった事件に絡み、基金事務長として口座を一手に管理、2010年9月の事件発覚直前に逃亡した彼は、約6400万円の業務上横領容疑で国際指名手配されていた。突然の逮捕劇に、本人を知る地元・長野市の知人も、外見の変わりように仰天。

「テレビで見て、まるで別人のような痩せように驚いた。長野では、さすが事務長だけあって、恰幅もよく、羽振りもいい感じだったから」

 と話すのは、彼が逃亡前まで住んだ長野市郊外の家の大家の男性。市の中心部から車で約30分、山を切り崩して造られた静かな住宅地にその家はあった。周りの家に比べ、古くつましい平屋5軒が長屋風に並び、うち1軒が彼の家だった。家賃月5万円で10年以上住み続けた。家のつましさの割に高級車が2台あったのが目を引いた。

 任された基金の口座の一部を着服し始めたのは2005年ごろからとみられ、タイに頻繁に行きだした時期とほぼ重なる。行方をくらますまで30回近くタイに入国、高級飲食店で飲み食いし、複数のタイ女性と付き合っていた。

 逃亡後も100万円単位のカネとブランド品をタイ女性に贈りまくる生活を続けたが、最後の数カ月はカネがなく、家賃8千円のアパート暮らしで、それも滞納。付き合いのあった女性にカネを無心した。女性がカネと携帯を渡した後で警察に通報、散髪と買い物から戻ったところを逮捕された。

AERA 2013年11月18日号より抜粋