かつて名門校として名を馳せた都立高。近年、東大合格者が急増し、偏差値も上がるなど、再び注目されている。生き残りをかけた各校の秘策とは。
2011年に現役で東大に22人合格し、約40年ぶりに20人台に乗せて注目された日比谷高校(千代田区)は、進学指導重点校(以下、重点校)に指定されたことを機に大胆な授業改革を行った。カリキュラムを見直し、授業は1日45分7時間に。授業のほかに土曜講習や100講座に及ぶ夏期講習も開設した。
「知識の伝達だけでなく、生徒に考えさせる授業を展開したい」(武内彰校長)
07年には文部科学省が科学技術系人材の育成のために設けた、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定校となり、夏休みにはハワイ島で研修を行ったり、マサチューセッツ工科大学やハーバード大学などを訪問し学生や教授と交流を図ったりしている。さらに生徒全員の入学時から定期考査、模試、志望校、所属クラブなどのデータを入力し、全職員が共有することで的確なアドバイスができるようになったという。
「重点校のなかで一番生徒を伸ばす」と定評があるのが八王子東高校(八王子市)。制服のある学校は日比谷と八王子東の2校で、まじめな生徒が多く夏休みも来校し自習する姿が目立つ。
面倒見の良さに定評があり、2学期制を導入する学校が多いなかで3学期制を維持。定期考査や通知表で評価する機会を少しでも多く持つためだという。個人面談も1〜2年は年4回、3年は5回と他校より多い。部活を奨励しているのも同校の特徴だ。1~2年次の5月と2月には部活動保護者会を開く。
「思うような成績が取れないと、部活をやめさせようとする保護者もいる。部活がもたらす効果をアナウンスしています」(吉田順一校長)
ここ10年、成長著しいのが新宿高校(新宿区)だ。重点校に次ぐ進学指導特別推進校という位置づけだが、「数年で重点校になる」(戸田弘美校長)と意気軒昂だ。「都会の学校とは思えないほど、生徒は素朴でまじめ。部活や行事も熱心で仲間意識が強い」という。「チーム新宿」を合言葉に、10年前から改革を進めた結果、04年の国公立大合格者19人から13年には94人、早慶大が31人から79人へと増加した。現役率も高く、国公立は85人が現役。今年は現役で東大に2人合格した。2人とも塾に通っておらず、1人は入学時の成績が中下位だったという。
「本校の特徴は、上位層だけでなく成績の低い生徒の底上げです。下の生徒が伸びることで、連鎖的に中上位の生徒も成長します」(戸田校長)
習熟度授業も数学なら2クラスを3段階に分け、下位クラスほど人数を少なくし、ていねいな指導を施す。毎日の宿題のほか、各学年の教師が1年間を見通して計画した「週末課題」を出す。秋には勉強合宿を行い、自学自習の習慣をつける。
※AERA 2013年9月16日号