カネボウと子会社2社が製造販売する美白化粧品で、肌がまだらに白くなる「白斑(はくはん)」などの被害が出ている問題で、カネボウは4日、自社製品の計8ブランド54製品の自主回収を発表した。ただ、消費者の手元にあると同社が推定する約45万個のうち、約36万個の回収にとどまる。
被害も拡大している。カネボウによると、7月19日までに6808人から症状や不安を訴える申し出があり、このうち、白斑が「3カ所以上」「5センチ以上」「顔に明らかな症状」などにあてはまる重症者が2250人にものぼるという。
カネボウは何故、被害の拡大を防げなかったのか。カネボウに最初の被害相談があったのは、2年前の2011年のことだった。この際には、個人特有の病気として処理され、製品との関連性は「なし」と処理された。他にも複数の相談があったことも確認されている。
「初動で対応を間違えなければ、被害の拡大を防げた」
そう話すのは、危機管理コンサルタントで「リスク・ヘッジ」代表の田中辰巳さんだ。
「危機管理で必要な悲観的予測が行われていなかった。自社の化粧品に問題があるのでは、との視点が決定的に欠落していた」
カネボウは06年1月に花王の子会社となった。この統合こそが背景になったと見る向きもある。というのも、花王は花王で化粧品事業を続けており、花王グループには化粧品分野では「花王」と「カネボウ」が別々に存在し続けているからだ。
「一つの家に二つの家族が住んでいるようなもの。そもそも、指揮命令系統、情報伝達過程が違う。二つ、三つの組織が一つになっても、本当の意味で定着するには時間がかかる。会社名も事業内容も統合されていなければ、なおさらです」
みずほ総合研究所主席研究員だった信州大学の真壁昭夫教授は銀行合併の経験も踏まえて、そう話す。
※AERA 2013年8月5日号