「マスクだって用意できないのに、トイレットペーパーだってどうなるかわからない」
SNS上ではこんな書き込みがあふれている。国を信じて落ち着いて行動すべきなのだろうが、国も信頼回復への取り組みが求められる。
デマを収束させにくくしている要因としては、小売店など企業の構造的な弱点もある。十分に商品を店頭に並べれば、そもそもパニックはおきない。売り切れたら、すぐに倉庫から補充すればいいはずだ。
だが、企業は収益力を高めるため、在庫を出来るだけ減らすことに力を入れてきた。平均的な売り上げに応じて、必要最小限のものだけ並べる。店の倉庫は小さく、商品は巨大な物流センターに集約し、定期的にトラックで運ぶのが一般的だ。このやり方は効率的で人手もかからないが、いったん想定外に売れる商品があると、対応できなくなる。
「トイレットペーパーのようなかさばるモノは、店頭に並べられる量に限りがあります。物流センターから補充しようとしても、すぐには持ってこられないんです」(大手スーパーの担当者)
小売店に限らず企業は、人員をぎりぎりまで削減している。トラックの運転手らの人手不足も深刻で、緊急事態に対応できる余裕は少ない。リストラなどで「経営のスリム化」を推し進めた結果、想定外に対応できる柔軟性が弱まってしまったのだ。
石油危機を経験した70代の女性は、品不足は続くかもしれないと心配する。
「オイルショックの時も、デマだとわかっていながら慌てて買いに行った。周りに流されちゃう人が多いんです。新型コロナウイルスの問題自体が収まらないと、売り切れる商品が次々に出てくるかもしれません」
安倍首相は会見で、「できることは全てやる」と強調した。果たして、国の信頼を回復し、デマを止められるのだろうか。(本誌・多田敏男)
※週刊朝日オンライン限定記事