政府のキャッシュレス決済推進のためのポイント還元サービスなどが追い風となり、タクシー会社ではクレジットカードのほか、交通系ICカードやQRコード決済など多様なキャッシュレス決済に対応できる「マルチ化」を進めている。ただ、決済の場所も移動するため、通信障害が起こった際の脆弱(ぜいじゃく)性が露呈した形だ。

 タクシー業界の関係者は「運転手は、客が現金決済を望んだ場合にもしっかり対応できるように、十分な釣り銭を持つようにしている」と言う。しかし、都心ではキャッシュレス決済が5割を超えるタクシー会社も珍しくなく、システムがダウンすれば釣り銭に困る。

 一方で、キャッシュレス決済や配車予約などの新たなサービスにより、客の利便性が向上し、タクシー運転手も多くの現金を持たずに済むので防犯対策には役立つという。

 日本交通HDはシステム障害の1週間前、DeNA(ディー・エヌ・エー)とタクシー配車アプリ事業の統合を発表しており、両事業あわせて配車可能台数は約10万台と最大手になる。

 訪日外国人が増えることが予想される東京五輪・パラリンピックを控え、決済システムの安全対策の必要性が浮き彫りになった。(本誌・小島清利)

週刊朝日  2020年3月6日号