しかし、豊田社長はジョンソン氏よりトランプ氏を好きなことは確実だ。米国でトヨタは、既にトランプ支持を明確にし、怒った加州はトヨタ車を買わないと決めた。
ジョンソン首相率いる英国の規制では、トヨタの得意なHVやPHV(プラグインハイブリッド車)も排除される。EUやさらには世界最大市場の中国までもがこれに追随する可能性もあるし、目標年次の前倒し競争が起きる可能性も排除できない。
ところが、トヨタは本格的EV(電気自動車)をまだ販売できない。水素自動車が本命だと読み間違えてEV開発競争で完全に出遅れたのだ。EVシフトを進める過渡期にHVやPHVの大量販売で利益を出しながら遅れたEVで追いつくというトヨタの戦略は大きく狂う可能性がある。トランプ大統領が排ガス規制を緩めてくれることで一息つけると思っていたのも思わぬ誤算となるかもしれない。
豊田氏は、インタビューで、「うるさくてガソリン臭くて、そんな車が好き」だと公言している。NGO団体から「化石賞」をもらえそうだ。インタビューを見たとき、どうせなら「トランプさんも大好き!」と言えばおもしろかったのに、と言いたくなったが、日本製造業の屋台骨であるトヨタの苦境を笑い話にするのは不謹慎だろうか。
※週刊朝日 2020年2月28日号