古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など
古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など
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トランプ米大統領(左)とジョンソン英首相 (c)朝日新聞社
トランプ米大統領(左)とジョンソン英首相 (c)朝日新聞社

 トヨタの豊田章男社長が好きなのは、米国トランプ大統領と英国ジョンソン首相のどちらか?

 その答えは、トランプ大統領だ、と私は思う。

 TPPやパリ協定から離脱しアメリカファーストを掲げるトランプ大統領とEU離脱を主導したジョンソン首相は、その政治スタイルがよく似ていると言われる。

 しかし、ある一点で両者は真逆の政策をとっている。それは、地球温暖化対策だ。

 トランプ氏の温暖化対策は消極的などというものではない。そもそも、彼の基本スタンスは、「温暖化の否定」だ。したがって、温暖化対策も不要ということになる。就任以来、パリ協定離脱を手始めに、様々な環境規制の緩和策を実施してきた。最近も、カリフォルニア州などの厳格な排ガス規制を否定し、連邦政府による非常に緩い規制を導入しようとして、加州などと激しい対立になっている。

 ジョンソン首相も、そのイメージからして、温暖化対策に後ろ向きだと思う人も多いだろう。しかし、そうした見方は「偏見」のようだ。

 イギリスは、元々、ガソリン車とディーゼル車の新規販売を2040年までに禁止する予定だった。それだけでもかなり野心的だが、つい最近、英政府は、この目標をさらに5年間前倒して35年を目標とする方針を打ち出し、世界を驚かせた。

 しかも、その禁止対象として、ガソリン・ディーゼル車にとどまらず、何とHV(ハイブリッド車)まで含めることにした。現在市場に出回る車の98%が販売禁止になってしまうのだから大変なことだ。

 そこで、冒頭のクイズに戻ろう。日本の自動車メーカーは、世界で排ガス規制が強化される中、最も厳しい排ガス規制をクリアして販売を伸ばし、世界をリードする地位を築いた。今もHVなどの環境技術で優位に立つから、排ガス規制の厳格化はチャンスだと考えるのではないかと思う人もいるだろう。現に、米国で対立が続くトランプ対加州の排ガス規制を巡る争いでは、ホンダがいち早く加州支持を打ち出している。

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