例えば、手足の末端の毛細血管がゴースト化すれば「冷え性」に、頭皮ならば「薄毛」「白髪」を引き起こす。毛細血管は全身に張り巡らされているので、「肩こり」「しみ」「しわ」の原因にもなる。さらには脳の毛細血管がゴースト化すれば「脳梗塞(こうそく)」、心臓ならば「心筋梗塞」、ほかにも「内臓疾患」や「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」などの病気を引き起こす可能性すらある。
ゴースト血管は、「アルツハイマー病」にも関係がある。この病気の原因物質とされる「アミロイドβ」は通常、毛細血管を通じて回収される。しかし、ゴースト血管があると回収が困難になり、脳に蓄積しやすくなる。その結果、アルツハイマー病の進行が加速するという研究もあるのだ。
たしかに自分の血管の状態を知ることは大切だが、大げさに騒ぐ必要はないと言うのは、四谷・血管クリニック(東京都新宿区)の保坂純郎院長だ。
「血液検査である程度のことはわかるので、無理をして測定器を使う必要はありませんし、不安がる必要もありません。そもそも加齢によって、毛細血管の一部はゴースト化するものです。ただ、ゴースト化を遅らせたり、予防したりすることは可能です」
研究によると、健康な毛細血管の量は、20代を100とすると60代では70。約3割が加齢によってゴースト化するという。
保坂院長によると、血管がゴースト化するのは血管の壁が柔軟でなくなってしまったり、赤血球自体が硬くなったりすることで、毛細血管の細い管の中を酸素や栄養素を運ぶ赤血球が通れなくなるため。血管の壁と赤血球を柔軟に保てばゴースト化は起こらない。
「ゴースト血管の大きな要因は、肥満、食べすぎ、運動不足。肥満になると余分な脂肪分に血液が回ってしまい、毛細血管まで血液が届きにくくなります。食べすぎは消化器官に血液が集中するので末端の血液が減少してしまいます。運動不足で体を動かさないと毛細血管を使う機会が少なくなるのでゴースト化しやすくなるのです」
保坂院長は続ける。
「また、ストレスがかかると交感神経が優位になり、血管が狭まってしまいます。リラックスして副交感神経を優位にして血管を広げるように心がけましょう。それからたばこは厳禁。血管を萎縮させてしまいます。つまりは生活習慣病予防と同じです」