

ジャーナリストの田原総一朗氏は、安倍政権下の一連の疑惑について、自民党内部へ疑問を呈する。
* * *
1月20日から衆参本会議が始まったが、朝日新聞は「『疑惑国会』開幕」と報じた。たしかに「桜を見る会」「カジノを含むIR汚職」、そして「経産、法務2閣僚の辞任」など、疑惑満載の国会である。
そして、安倍晋三首相は施政方針演説で、これらの疑惑についてはまったく触れなかった。
それに対して、22日の代表質問で、立憲民主党の枝野幸男代表は、「桜を見る会」前日の懇親会費が5千円で、相場より大幅に安いと指摘し、明細書の提出を要求した。そして、会に安倍首相の地元支持者約800人が招待された点も「公職選挙法違反の買収と、実質的に何が違うのか」と強く迫った。
また、枝野代表が招待客名簿の電子データを廃棄した証拠となる履歴の調査・開示を要求すると、安倍首相は、システムに不正侵入される可能性を理由に拒否。野党席から批判の声が上がり、議場内は騒然となった。
さらに枝野代表は、安倍首相の説明姿勢が社会のモラル崩壊を招くとして退陣を強く迫った。
だが、安倍首相は何の反応も示さなかった。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、内閣府の担当副大臣だった秋元司衆議院議員が逮捕、起訴され、IR事業が「疑惑にまみれた」と断じて、凍結を求めた。
それに対して安倍首相は「副大臣に任命した者として重く受け止めている」と、任命責任は認めたが、捜査への影響を理由に詳細なコメントは拒否した。そして、IRについては「観光先進国の実現を後押しする」ために、事件があっても推進するとの考えを強調した。
枝野、玉木両代表らの質問に対して、いってみれば安倍首相は「ゼロ回答」を繰り返しただけであった。
朝日新聞が「疑惑国会」と報じ、国民の多くも疑惑満載にいら立っているのだが、安倍首相からは危機感というものがまるで感じられなかった。
すでに何度も記しているが、昨年、共産党が「桜を見る会」のとんでもない事態を露呈させたとき、私は自民党の幹部たちに「なぜ、こんなとんでもないことが起きたのか」と問うた。政府が公表している開催要領によると、招待範囲はかなり具体的に示されていて、その人数も約1万人と定められていたのである。