作家・室井佑月氏は、障害者施設での殺傷事件、いわゆる「やまゆり園事件」の裁判が始まったことを受け、被告の考えを「幼稚」と断ずる。
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相模原市の障害者施設で、2016年7月、入所者ら45人を殺傷し、殺人罪などに問われた元職員、植松聖被告の裁判員裁判が今月の8日から始まった。
初公判で植松被告は「みなさまに深くおわびいたします」と一応述べたものの、その後、自分の手の指を口に入れようとし、刑務官が阻止しようとしたら暴れたらしい。テレビでは指を噛(か)みちぎろうとしたのでないかといっていた。それを聞いて、ある有名なヤクザ映画の名シーンでそういうのがあったな、とすぐ思った。
植松被告がそれを知っていたかどうかはわからない。でも、事件が起こってからの報道によると、彼は学生の頃から不良に憧れていたという。そういうことが格好良いと思うのかも。
もちろんあたしは、犯罪者を感化させるような作品が……という話をしたいのではない。むしろ、それに対しては真逆の考えである。人は生活のすべてからなんらか影響を受けているわけで、だったらそのすべてを論じたらいい。
あたしがいいたいのはそういうことじゃない。植松被告はひどく幼稚だ、ということ。
植松被告は16年2月、衆議院議長の公邸を訪ね、大島理森氏に宛てた手紙を渡している。それには、詳しい犯行計画と、自分のこれから取る行動は日本のためにするのだ、ということが書かれてあった。
「今こそ革命を行い、全人類の為に必要不可欠である辛い決断をする時だと考えます。日本国が大きな第一歩を踏み出すのです。(中略)是非、安倍晋三様のお耳に伝えて頂ければと思います。私が人類の為にできることを真剣に考えた答えでございます。衆議院議長大島理森様、どうか愛する日本国、全人類の為にお力添え頂けないでしょうか」
彼は獄中のメディア取材でも、この国は借金大国、お金のかかる障害者はいないほうがいい、というようなことを堂々といっていた。