米軍がイラクの首都バクダッドで、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害した事件。主権国家イランの軍首脳を米軍が殺害したのは、国際法違反を問われる蛮行だ。
イランの米軍への報復攻撃により、米イラン開戦かという状況になった。ネットでも、第三次世界大戦(WWIII)がトレンド入りし、世界を震撼させている。
一方、今回の事態に日本国内で一番肝を冷やしたのは安倍晋三総理だろう。
安倍総理は、トランプ大統領に忠誠を尽くす一方で、イランのロウハニ大統領とも昨年末に日本で会見するなど、イランとの友好関係を誇示してきた。実態はただの「蝙蝠外交」に過ぎないのだが、ご本人は、米イランの間を取り持つことができる唯一の国であると胸を張っていたのだ。
しかし、両国が戦争直前となった途端、安倍総理は逃げ腰になり、コメントも避けようとした。米国寄りのことを言えばイランの反感を買い、イランの革命防衛隊などから日本のタンカーが攻撃されたりする恐れがある。他方でイラン寄りの姿勢を示せば、トランプ大統領の逆鱗に触れて、またどんな無理難題を吹っかけられるかもしれない。どうすればよいのかわからなかったのだろう。
ゴルフ三昧で無言の安倍総理に対して、ネット上で批判が高まったが、6日の伊勢神宮参拝後の恒例の記者会見でも、「関係者に緊張緩和のための外交努力を求める」などと当たり障りのない発言をしただけだった。
安倍政権は昨年末に自衛隊の中東派遣を決めたが、この状況では、たとえ「情報収集」が目的と言っても、米イランの争いに巻き込まれるリスクは高い。さらに安倍総理は、米国イラン開戦はすぐにはないという情勢になったのを受けて、これなら安心と、予定された中東訪問も強行する。
私は今、2015年1月のことを思い出している。ジャーナリストの後藤健二さんがイスラム国(IS)の捕虜となっていることを知りながら、それを隠して中東を訪問した安倍総理は、エジプトで「ISと戦う周辺各国に2億ドル支援する」と表明。この事実上の宣戦布告に対し、ISは、後藤夫人との身代金交渉を打ち切り、後藤さんを処刑した。