日本の教育が劣化しているというニュースが目立つ。
つい最近も、経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)の読解力部門で、日本は2012年の4位、15年の8位から18年は一気に15位まで下がったと報じられた。
その一番の原因は、ICT(情報通信技術)への対応の遅れだ。読解力とICTの関係は?と思うが、説明を聞くと納得する。
そもそも、このPISAの試験は、パソコンの使用が前提だ。現代社会における読解力とは、ネット空間を行き交う大量の情報から、その質を吟味・選択して判断し、さらにネット上で自分の考えを発信する力を意味する。日本は「情報を探し出す力」と情報を「評価し、熟考する力」で成績を落とした。日ごろからPCを使う教育を受けていない生徒が多い日本では、当然の結果だ。
一方、安倍政権は、年末の予算編成の目玉として、23年度までに総額4千億円かけて、小中学校でパソコン1人1台を目指すと発表した。しかし、これで、日本のICT教育のレベルが飛躍的に上がるとは言えない。PCを使える教師が少なすぎるからだ。
18年のOECDの「国際教員指導環境調査」によれば、課題や学級活動でICTを「いつも」または「しばしば」活用させていると答えた日本の中学教員の割合は17・9%でOECD平均(51・3%)を大きく下回り、ビリから2番目。小学校でも24・4%(平均は非公表)で下から4番目だ。
03年度に情報科を必修とした高校でも状況は同じ。プログラミングを22年度に高校で必修化し、さらに、24年度から大学入学共通テストに情報科を導入の方向なのだが、情報科の免許を持つ専任教員の採用試験をしたことのない都道府県が18年時点で13もあるというのだから驚く。
その原因は、やる気のない都道府県からの陳情を受けて、文科省が、プログラミングを学ばなくてもよい「社会と情報」という「プログラミングなし」のコースを情報科として認めてしまったことにある。多くの高校がこの逃げ道を利用し、数学や理科の教員が片手間に「ナンチャッテ情報科」の授業を行っている。この間16年、非常に多くの高校生がプログラミングを学ぶ機会を奪われたのだ。