人工知能の権威である東大の松尾豊教授によると、「日本企業は、第3次産業革命(IT革命)に乗り遅れて、米国の3周遅れになってしまった」ということだ。

 日本の大企業の経営者たちが、いずれもサラリーマン経営者で、チャレンジができないためだという。

 そして、このままだとどんどん落ち込んでしまう。そこで、トヨタ、日立、パナソニック、三井住友銀行、三菱UFJなど、少なからぬ大企業が、メインの研究所を日本国内ではなく、カリフォルニアのシリコンバレーに設置している。

 日本では人工知能の研究者が育っておらず、米国のスタンフォード大、ハーバード大、マサチューセッツ工科大などには多くの研究者がいるが、日本に来てくれないのだという。

 なぜ、米国の研究者たちが、日本に来てくれないのか。その理由は、次の二つのようだ。

 まず、中国や欧州諸国では研究者の待遇は年収2千万円以上で、それに対して、日本の企業は年功序列制なので、20代、30代前半の研究者の待遇は大きく劣り、かなりの格差がある。

 そして、もう一つは、日本企業は失敗を許さない。しかし、人工知能は3回、4回失敗しないと成功しないのである。

 そこで、少なからぬ大企業がシリコンバレーに研究所を設置しているのだが、それで、はたして企業体質を変えることができるのか。ここが、勝負どころである。

週刊朝日  2019年12月27日号

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