屋根の木を「森」に見立てると、3層からなる観客席(スタンド)は5色で「こもれび」を表現している。「アースカラー」の5色はランダムな配置に見えるが、建築家の隈研吾さが一つ一つ配色を指示したという。

 旧競技場の1割増の約6万席、うち車いす席が約500席で、ドリンクホルダー完備。1層目が20度、2層目が29度、3層目が34度と、すり鉢型になる傾斜で設置されているため、最上段の席からでも競技場が近く感じられる。想像以上にフィールドを近く感じ、開閉会式や陸上、サッカーのチケットが当たった観客を心底うらやましく思った。

 暑さ対策として、最上段の上部とスタンド各層の間(3階と1階の通路部分)から自然風が取り込める設計になっているほか、ミスト冷却設備が8カ所、気流創出ファンが185台設置されている。

 だが、内覧会では担当者が「夏に競技場内にいてもあまり暑くなかった」と主張するばかりで、具体的な数値による報告はなかった。

 5階の「空の杜(もり)」へ移った。ここはスタジアムの外の景色を360度楽しめる1周850メートルほどのオープンスペースだ。休憩用のベンチが並び、梅、ツツジ、カエデなど100種以上の四季折々の植物が癒やしの空間を演出。天気が良ければ、北東には東京タワーやスカイツリー、南西には富士山が望める。

 外に見える4階の軒ひさしには、47都道府県から集められた杉材(沖縄のみリュウキュウマツ)が使われており、北側に北海道・東北、南側に九州・沖縄という具合に、スタジアムの方位に応じて配置されている。大会後、散策スペースとして開放することが検討されている。

 目を見張ったのはトイレ設備の充実ぶりだ。ともにオムツ交換台がある男子トイレ・女子トイレのほかに、車いす対応トイレやオストメイト付きトイレを指す個室の「アクセシブルトイレ」が93カ所もある。うち16カ所の男女共用トイレは、LGBTの人や付き添いが必要な発達障がい者らが利用できるよう配慮した。

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