あと、世間の多くは彼女を「上手い女優」と捉えているようですが、私はそうは感じません。沢尻エリカ然とした独自の存在感と、圧倒的な造作の美しさは確かにあります。特に女優には、芝居の上手さで訴える「名女優タイプ」と、演技以上の存在感(いかに場面の中で浮き、画面からはみ出せるか)で勝負する「大女優タイプ」がいて、エリカ様はどこからどう見ても「大女優系」に分類される人材です。しかしご本人的には「芝居の上手さ」を押し出したい感が満載のようで、それもまたエリカ様がエリカ様になりきれない忸怩(じくじ)たる部分でもあるのです。
そして今更ながら「MDMA」という、これまた何の奥ゆかしさも感じさせない代物で……。すべてが普通過ぎる。どんなにベタな様式美でも、世間の想像力など到底及ばないぐらいの非日常や非常識を提供してこそプロフェッショナルなはず。いつかエリカ様を「愛せる」日が来ることを願って止みません。
※週刊朝日 2019年12月13日号
【週刊朝日編集部からのお知らせ】
いつも『アイドルを性(さが)せ!』をご愛読くださり、ありがとうございます。この連載は2016年5月から週刊朝日で始まりましたが、このたび書籍化して、単行本『熱視線』(本体価格1400円)として発売されました。連載の内容を大幅に加筆修正し、ミッツさんご自身が描いているアイドルの似顔絵(AERA dotでは未掲載)も収載しています。装丁にもこだわりました。毒と愛を込めて作った一冊です。ぜひ、紙の本でじっくり味わってお楽しみください!