「50歳以降に届くねんきん定期便は、60歳まで同じ条件で払ったものと仮定した見込み額が書かれています。転職の多い人は要注意です。職歴と年金に加入していた期間に齟齬(そご)がないかもチェックしましょう。国民年金は大学生のときなどに保険料を払っていない空白期間があれば、受給額が満額に達しないケースも多い」(北村さん)

 空白期間がわかれば、年金を増やす余地がどのくらいあるのかもわかる。60歳以降も働くべきかどうかを決める判断材料にもなる。

 北村さんは、65歳以降も元気なうちはなるべく働いて年金以外の収入を確保するべきだという。一人でがんばらずに、妻ら家族と協力して家計のゆとりを少しでも増やす。長く働くほど加入期間が延び、受け取れる年金もそれだけ増える。

 健康に自信がある人は、年金の受給開始時期を繰り下げることも考える。もらえる年金が1カ月あたり0.7%増える。65歳から70歳に繰り下げると、毎月の受給額は最大42%増える。

「繰り上げ、繰り下げのどちらを選ぶにしても、もらえる額は増減した受給水準のまま生涯変わらない。慎重に判断しましょう。健康に自信があって、生活に困らないだけの蓄えがあるなら、開始時期を遅らせて受給水準を上げたほうがよい場合もあります」(同)

 政府は年金の受給開始を繰り下げできる期間を75歳まで延ばす方針だ。受給開始時期の選択肢は増えるが、老後の生活設計も大きく左右するので、健康状態も踏まえ慎重な判断が求められる。

 国民年金に空白期間がある人は、60歳以降も保険料を納める「任意加入制度」や、「追納制度」を利用して受給額を増やせる。自営業者らは国民年金に上乗せできる国民年金基金に加入することも検討しよう。(本誌・池田正史、浅井秀樹)

週刊朝日  2019年11月22日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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