日銀の爆買いは実は政府の資金繰り対策だった。政府が発行した国債をすぐに買うことは、日銀が刷った紙幣を政府に渡すようなもの。政府が資金繰りに行き詰まるのを一時的に防ぐ効果があるが、いつかは崩壊する。山一証券が飛ばしで危機を先送りしたが、力尽きて倒産したのと同じだ。
私は、大きな政府、規制過多、結果平等主義の日本は社会主義国家だと言い続けてきた。最近では市場機能を奪い、政府・日銀が株価や不動産価格、長期金利を決めているというのも、その理由に加わっている。
問題は、これらの商品は値動きが大きいこと。前回、前々回と、日銀の償却原価法(簿価会計の一種)のおかしさを書いた。日銀の財務体質が安定的に見えても、時価会計で評価すると大きく変動してしまう。円の価値もそれに応じて動けば、暴落しハイパーインフレになるリスクが高まる。
だからこそ、中央銀行は健全性を重視し、株や不動産、長期国債などは保有しなかったのだ。日銀はそのタブーを破った。異次元緩和の副作用はべらぼうに大きい。最大のものは、「日銀倒産の危機」である。
※週刊朝日 2019年11月22日号