安藤氏は経費削減策として、茅の穂先を下に向ける「逆葺き」を提案した。一般的なのは丈夫な根元を下に向ける「真葺き」だが、「逆葺き」にすると廉価で、簡素にできるという。

■菅氏が説明した職人不足はウソ

 だが、宮内庁は“ご意見無用”を決め込んでいる。前回は建設中の大嘗宮を風雨から保護するための覆屋が建てられたが、今回は出費を抑えるため見送られた。だから、ゲリラ豪雨など天候の急変が起きた場合、茅葺き屋根では不安だということらしい。

 安藤氏が嘆息しながら語る。

「大嘗宮は仮の御殿なのですから、木と草でつくればいいのです。鉄筋など使ってはならないのです。お金をかけて大手ゼネコンに造営させながら、茅葺き屋根は経費がかかるからやらないというのは本末転倒です。雨漏りくらいしてもいいじゃないですか。そう言うと、宮内庁の担当者の方は『先生はそんなこと言って、工期や安全面は大丈夫だと言い切れるんですか?』という反応です。リスクを過大に考えて、大嘗祭の本来の意義を後回しにしてしまっている印象です」

 板葺きに反対する声は、自民党内からも上がっている。有志議員らが「茅葺き文化伝承議員連盟」(会長・山口俊一衆院議員)を結成。8月30日に菅義偉官房長官と面会し、茅葺き屋根に仕様変更することを要請した。菅氏は「内部で検討してみる」と応じた。

 議連の事務局長を務める務台俊介衆院議員がこう説明する。

「菅さんは『宮内庁はどうして(茅葺きは)ダメだと言っているんだ?』と逆に質問してくるほどで、意外そうな様子でした。結局、宮内庁は一度決めたことは見直す気などなく、設計変更に応じようとしませんでした。もっと早く議連を作って要望していれば、と悔やまれます。宮内庁は今回の一件を記憶にとどめ、二度と同じ轍を踏まないようにしてほしいと思います」

 だが、菅氏は9月27日の記者会見で、茅葺き屋根にしなかった理由について「職人不足によって難しいと判断した」などと答えている。

 神社界関係者があきれながら言う。

「職人不足というのはウソです。なぜなら、茅葺き文化協会のほうで必要な茅と職人を確保し、全面的に協力すると宮内庁に申し入れているからです。宮内庁に言いくるめられたのか、菅さんはこの議論から逃げちゃったんです。最近はその言い訳が通用しないから、工期が間に合わないとか言っていますが、宮内庁も本音では後悔していると思いますよ」

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