一方、日本では一流大学の新卒が一斉に経団連企業に就職する。労働条件を海外の大企業と比べれば、薄給なうえに残業も多く、転勤もあるし、セクハラ・パワハラも日常茶飯事。ブラック企業と言っても良いくらいだ。しかも、多くの企業は、将来の成長の源となる新規事業も見つけられず、史上最高益を出しても無駄金をため込むだけ。普通なら若者からそっぽを向かれても仕方ない。
それでも、ある程度優秀な学生を集められるのは、日本の若者が英語を話せないからだ。もし英語に不自由しなければ、優秀な若者は経団連企業など見向きもせず、海外に大量流出してしまうだろう。
法律の英訳の遅れも英語教育の稚拙さも、意図されたものではない。
官僚の能力不足と怠慢ゆえに起きた政策の大失敗であるが、そのおかげで、やはり実力のない経団連企業の無能な経営者も生き残ることができる。
かくして、日本の経済は、ガラパゴス化しながらじり貧の道を歩んでいるのだ。
このままでは、経団連企業と一体化した「沈みゆく官僚国家日本」の再浮上を期待するのは難しそうだ。
※週刊朝日 2019年11月8日号