
10月23日で、あの凄惨(せいさん)な事件から1カ月が経過した。
茨城県境町の一家殺傷事件。記者が同日、うっそうとした木々に囲われた現場を訪ねると、通用入り口の前に花束が一つ置かれていた。
事件は9月23日の午前0時40分ごろに発生。会社員の小林光則さん(48)方から、女性の声で「助けて」と110番通報があった。県警境署員らが駆け付けると、2階の寝室で、光則さんと妻のパート従業員の美和さん(50)が心肺停止状態で見つかり、その場で死亡が確認された。遺体に切り傷があり、県警は何者かが一家を襲った殺人事件として捜査を始めた。
県警によると、光則さんは一家5人暮らしで、2階の別室にいた中学1年の長男(13)は両足と腕に刺し傷があり、長男と同じ部屋にいた小学6年の次女(11)も両手の痛みを訴えて病院に運ばれたが、いずれも命に別条はなかった。1階にいた大学3年の長女(21)にも、けがはなかった。
光則さん夫婦は就寝中に襲われたとみられ、首や顔などに鋭利な刃物で切られたような痕があった。光則さんの傷は肺深くまで達するものもあったという。
捜査関係者によると、長男と次女は2階の子ども部屋の2段ベッドで就寝中に襲われた。犯人は「下りろ」と声を掛けた後、長男の両脚や腕を切りつけ、次女にスプレーのようなものをかけたとみられている。
2人は「サイレンの音が聞こえてくるといなくなった」と話し、長男は「男は帽子にマスク姿だった」とも説明している。現場周辺ではマスク姿の不審な男の目撃情報も寄せられているが、捜査本部ではつぶしきれていないという。
「捜査本部は改めて怨恨(えんこん)の線を洗っている。現場の状況から行きずりの犯行は考えづらいが、その線も捨てきれていない。何より防犯カメラが少ないので難航している」(捜査関係者)
事件現場の近くには、広大な釣り堀がある。記者が訪れた日も、数人の釣り客が糸を垂れていた。