しかし、「老後はのんびり」ということを保証すべきだというほど暢気ではない。日本の経済財政にそんなゆとりはない。
社会保障制度の「痛みを伴う」改革は避けて通れない道だ。
今こそ、本当のことを言うべき時だ。「働ける間は働いて」「若い世代の負担を軽減するために、高齢者も保険料を払う」「老いや病気で本当に働けなくなった時にしっかり国が面倒を見るためには負担を覚悟して」「夢物語は終わったのです」──そう国民に正直に語りかけ、少子高齢化社会に対応した新しい社会保障制度を再構築する議論を直ちに始めなければならない。
衆議院議員の任期満了近くまで解散は封印。そうすれば、2021年秋の衆院選まで国政選挙なしの貴重な2年弱の時間が生まれる。その間に、与野党が政局に囚われない議論で大改革案をまとめるべきだ。
それができなければ、安倍政権は史上最長ではあるが、何のレガシーも残せなかった恥ずべき政権として歴史に名を残すことになるだろう。
「改憲に最後のエネルギー」などという愚行にだけは走らないでもらいたい。
※週刊朝日 2019年11月1日号