指定暴力団山口組ナンバー2の「若頭」、高山清司氏(72)=恐喝罪で服役=が10月18日朝5時50分ごろ、府中刑務所(東京都府中市)を出所。厳戒態勢の中、JR品川駅に到着すると、山口組幹部が出迎えた。新幹線のグリーン車1車両を借り切って名古屋駅へ移動。車に乗り換え、名古屋市内の弘道会関係先に向かった。そこに幹部らが集まり、祝宴が行われた模様だ。
高山若頭は2005年7月に6代目山口組組長に就任した弘道会(名古屋市)出身の司忍氏の側近で、山口組若頭に抜擢された。弘道会による支配を強め、神戸発祥の山口組の分裂を招いたとされる人物だ。
高山若頭の手法に反発した神戸市に本部を置く山健組など山口組有力13団体が15年8月に「神戸山口組」を結成。さらに17年4月には神戸山口組から一部組員らが分裂し、「任きょう山口組」を結成。「山口組」を名乗る3団体は今も対立しており、今年になって神戸で抗争が相次いでいた。
4月には神戸山口組の幹部が山口組系組員に刺され重傷。8月には高山若頭の神戸市内の自宅前で傘下の組員が撃たれて重傷、10月には神戸市で弘道会系組員が山健組系組員らを射殺する事件があったばかりだ。
「山口組と神戸山口組は完全に抗争状態」(捜査関係者)
10月11日には暴力団対策法に基づき、組事務所などを使用制限する仮命令が出され、神戸市灘区にある山口組の組事務所や神戸山口組の本部などが使えない事態となった。
「当初、高山若頭は出所後、神戸市の自宅に帰るとみられていた。しかし、そこも仮命令で使用制限がかかり、名古屋市内の弘道会関係先に変更を余儀なくされた。万が一のことがあってはと、高山若頭の乗った新幹線はグリーン車1両、貸し切り状態。そこに山口組の関係者に加え、20人を超す警官も乗り込んだ」(捜査関係者)
だが、対立する神戸山口組関係者はこう話す。
「もともと山口組が分裂した原因は高山若頭にある。黙っていることはできない」
元山口組顧問弁護士の山之内幸夫氏はこう話す。
「山口組、神戸山口組、双方の幹部とは定期的に話しています。高山若頭が戻ったことで神戸山口組と話し合いのパイプができればとは思います。ただ、お互いの主張があまりに違いすぎて、すぐにはまとまりそうにないのが現状」
当面、緊張状態が続きそうだ(今西憲之)
※週刊朝日 2019年11月1日号