米食品医薬品局(FDA)は昨年4月、同国の医療ベンチャーが開発した、AIが自動で画像診断するソフトウェアを承認した。眼底カメラで撮った画像から、失明につながる糖尿病性網膜症の兆しを見極めるもの。医師なしで診断するシステムを初めて認めた。

 技術がさらに進めば、医師が負うべき責任の範囲も変わる。開発の状況に応じて、社会的なルールを整える必要がありそうだ。

 医療機器の審査体制も問われる。「AIは半年で古くなる」(医療機器メーカーの営業担当者)と言われるほど進歩が速い。いまは、医療機器の機能が変わった場合に評価をやり直すことになっている。短期間に何度も評価を受けなければならず手続きも面倒。開発コストがかさめば、負担は患者に跳ね返ってくる。

 AIメディカルサービスやエルピクセル、オンライン診療などを手がけるマイシンの3社は5月、AI医療機器の発展を目指す協議会を立ち上げた。開発を妨げる制度の改善を、国などに働きかけていく。

 AIが優れているのは確かだが、技術発達にルールや制度が追いついていない面もある。患者も過度に恐れず、うまくつきあっていかなければいけない。

 医療の未来を明るくするために、私たちもAIへの理解を深めることが求められている。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2019年10月11日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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