

落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「MGC」。
* * *
『マラソングランドチャンピオンシップ』略してMGC。「次回のお題は『MGC』です。なお私、夏休みをとらせて頂きますので、締切厳守でお願い致します」と編集K氏から圧キツめのメール。安心して欲しい。MGCとくればもうグウとも言わせないよ。ホントによく知ってるから。大丈夫、K氏にはゆっくり休んでもらいましょう。
で、MSGだけど、そもそもMS……。ん? MGCはMSGと似ているね。似ているがまるで異なるのがMSG。皆さんご存じ「マジソンスクエアガーデン」はニューヨークにあるスポーツの殿堂ですな。またその昔、日本の青少年にはマジソンバッグというものが流行っていたそうだ。私の姉も持っていた。このバッグは本場NY生まれではなく、台東区のエース株式会社というバリバリ下町企業が製造販売したらしい。で、バッタモンも出るくらい大ヒット。でも台東区製。またその頃、新日本プロレスの「MSGシリーズ」という興行があったのだが、これも本場NYで開催する訳でなく決勝は台東区の蔵前国技館。台東区≒NY。新日が米国のプロレス団体WWF(現WWE)の許可を得てMSGの名称を使用したらしい。MSGという響きは人々の心を掴むんだね……へ? なんの話だっけ? そうそうMGC、MGC。
しかし来年の五輪の暑さは大丈夫なんだろか。MGCは9月15日に開催。五輪のマラソンは8月上旬だ。日程を本番の暑い時期に合わせたほうが良かったんじゃないですかね。競歩の選手が余りの暑さに「コースを変更して欲しい」と訴えていたので、本番と同じコースであるなら、やはり同じ暑さでやらないと参考にならないんじゃなかろうか。競歩といえば……競歩の選手は何故競歩を始めようと思ったのだろう?という疑問が常々あります。だって走ったほうが速いよ。フォームにも決まりがあってあんなに制限のある競技をやりたいという想いはどこからくるのでしょう? 「競歩」で検索すると、「『マラソンでは厳しいが、競歩ならなんとかなるんじゃないか』と始めるのでは?」とか憶測で言ってる人がいたけどそれは失礼なはなしでね。子供のころからの夢だったとか、代々競歩の家系の生まれとか、いろんな理由があるだろう! たとえ始めるきっかけはそうだとしても、みなプライドを持って歩いてるはず……。
プライドといえば「山形の芋煮」ね。このコラムでも書きましたが、山形人の芋煮にかける情熱は「おらが村の芋煮談議」でケンカがおこるくらいだもの。去年、落語会の前に芋煮会を開いてもらいましたが、まぁ青空の下でワイワイ食べる芋煮は美味かった! 今年もその芋煮会……いや、一之輔独演会が山形・川西町であるのです。場所は地元出身の井上ひさしさんの蔵書を収めた遅筆堂文庫も併設された、まさに「山形のマジソンスクエアガーデン」ことKFP(川西町フレンドリープラザ)! 楽しみだ、芋煮! あ、独演会もね……えーと、あーMGCね。MGCはたしか9月15日に……あら? 芋煮会(独演会)と同じ日じゃないか!?
ということでMGC出場者には当日山形からエールを送ることにします! 頑張れ! 負けられない戦い(芋煮)がそこにある!
※週刊朝日 2019年9月20日号